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2022年04月16日 03時14分
お題: ストロー・ゴミ箱・付箋
浮気調査

ゴミ箱には目ぼしい手がかりはなかった。最近彼の様子がおかしい。急に対応がたどたどしい。きっと浮気だ。決定的だったのは流し台のコップのストローだ。口紅の跡。その時は動転して気づかないふりをしたが、問い詰めるか証拠として採取すればよかった。ふと机の上の付箋に目が留まる。鉛筆で表面を塗り潰すと文字が浮かんだ。12時ママ。待ち合わせ場所には彼の母親がいた。恋人のいた事がない彼は逐一母に相談していたのだ。

2022年04月15日 14時36分
お題: 背表紙・ヘッドホン・ビニール袋
秘密の呪文

「今なんて?」ヘッドホンを外し彼女に問いかけた。「だから、この本の背表紙をなぞりながら呪文を唱えると本の世界へ行けるの」彼女のあどけなさを残した笑顔。僕はいつもの冗談だと受け流した。そして彼女は失踪した。彼女の部屋はひどい有様だった。弁当ガラ、ペットボトル、ビニール袋、脱ぎ捨てた服…。そんなもので溢れかえっていた。「あなただってそれで現実を遮断してるじゃない」僕は彼女から呪文を教えて貰えなかった。

2022年04月15日 11時52分
お題: 背表紙・ヘッドホン・ビニール袋
猫のシラミ

夏が近づくと、『耳をすませば』の冒頭ように、陽気に夜のコンビニに行って、ヘッドホンでモンクを聴いて誰もいない家に向かって、ただいまの挨拶をする遊びをやるのだが、今日、玄関に入り、靴を放り、ビニール袋を脇に置いた所で棚の上に飴色の本があるのに目が溜まり、手に取ってみると、手に不思議な感触があって、背表紙を見ると、猫のシラミが沢山黄金の羽根のように付着してあり、僕は最高な気分でただいまと言った。

2022年04月15日 09時46分
お題: 背表紙・ヘッドホン・ビニール袋
日常

今日も朝ちゃんと起きれなかったね。無職のくせに。
彼はそれが口癖だった。早く起きるために早寝をしても、何も予定がないから起きることができないのだ。しょうがなく起き上がった彼は、顔を洗うよりも先にヘッドホンを付けた。
床にはコンビニのビニール袋が転がっている。中には昨日の食べ残した弁当が入っていた。
彼が手に取ったCDジャケットの背表紙は白紙となっていた。彼が聴いていたのは玉音放送だった。

2022年04月15日 08時35分
お題: 背表紙・ヘッドホン・ビニール袋
追憶

誕生日プレゼントでくれたヘッドホンを見るたびに彼女のことを思い出してしまう。どうしてこうなってしまったのか。アルバムの背表紙に書かれたずっと一緒にいようねの文字。彼女が記念日に作ってくれたものだ。思わず涙が溢れてきそうになる。こういうものも処分しないとな。まとめてそっとビニール袋に入れた。明日は燃えるゴミの日だったはずだ。

2022年04月15日 00時43分
お題: 背表紙・ヘッドホン・ビニール袋
欲しい言葉

「父の蔵書なの、これから燃やす」と、壁面に並ぶ古びた背表紙に圧倒された僕に彼女は言った。「欲しい言葉は書いてなかった、俺から時間を奪った、だから燃やせ。それが遺言なの」ダンボールやらビニール袋に大小の本を詰めながら彼女は言った。広い庭にふたりで運ぶ。本の山にガソリンを撒き火をつける。炎が上がる。彼女は僕のヘッドホンを指差して笑った。「それも燃やす?ほんとうに欲しい言葉なんて聞こえないでしょ」