2022年06月02日 22時54分
お題: 腹・ぐちょぐちょ・コーナー
一生の思い出

地上への階段ですでに豪雨の気配はしていた。親友と学校から電車で帰る平凡な一日だった。激しい通り雨。傘はない。男子高校生ふたりに失うものはなかったし、多くの会話はいらなかった。「いくか」どちらかが言い、どちらかが笑い、ふたりは走った。制服はずぶ濡れ、靴下はぐちょぐちょで間抜けな音が鳴る。いつもの公園までの最終コーナーの前で一人がコケた。ふたりは腹の底から笑った。一生の思い出になると、ふたりは思った。